『ユリの花に願いを込めて』


art:Fantasista Mayumi  作

 その昔、愛されていた美しいティーカップがありました。それは、英国王室のために特別にデザインされたもの。青と白の繊細なリリーパターンのこのカップは「ロイヤルリリー」と名付けられ、王室の茶会を象徴するアイテムとして愛用されました。

ロイヤルウースター

 19世紀の終わりころ、ロイヤルリリーのカップは、ウィンザー城で開かれた春の茶会で初めて披露されました。その茶会には、ヨーロッパ各地から王族や貴族が集まりました。中でも、若き日のエドワード王子はこのカップに特別な興味を示していました。エドワードはその優雅なデザインに心を奪われ、その美しさを絶賛しました。

 茶会の最中、王子がこのカップで紅茶を飲んでいると、突然庭園から青く輝く蝶が舞い込んできました。蝶は王子のティーカップの上を一回りして、一粒のキラキラと輝くしずくを落として飛び去りました。その瞬間、紅茶の表面に美しいユリの花が浮かび上がり、「たった一つ真の願いを叶えましょう」と声が聞こえてきたのです。

 その夜、エドワード王子はカップの不思議な力を信じ、自分の心に秘めた願いをそっと思い描きました。「人々が平和で幸せに暮らせる国を築きたい」。
翌朝、城の庭園には、これまで見たことのないほど多くのユリが咲き乱れていました。それはまるで王子の願いが形となったようでした。その後、エドワード王子は国を治める立場となり、多くの人々から「平和の王」として称えられるようになりました。

 その出来事以来、ロイヤルリリーのカップには不思議な力が宿ると言われるようになりました。このカップで紅茶を飲むと、持ち主が心から願うことが一つだけ叶えられるという噂が広まりました。しかし、その力を得るには純粋で誠実な心を持つことが条件だとされました。

 時を経て、ロイヤルリリーのカップは王室の宝物として保管されていましたが、あるとき英国のとある貴族の家に渡り、代々大切に受け継がれてきました。ある日、アンティークコレクターのヘンリー氏がロンドンの古美術店でこのカップを偶然見つけます。彼はカップの持つ特別な雰囲気に惹かれ、迷わず購入しました。

 ヘンリーが自宅に持ち帰り、初めてそのカップで紅茶を飲んだ夜、夢の中で広大なユリの咲き乱れる庭園に立っている自分を見ました。その庭園にはこれまでに出会った大切な人々が集い、笑顔で彼を迎えていました。目覚めたヘンリーは、その夢がカップの不思議な力によるものだと確信しました。

 ロイヤルリリーのカップは、時を超え、持ち主の願いや幸せを紡いできた特別な存在です。このカップでお茶を飲むたびに、あなたもまた心の中に小さな幸せと希望を見つけることができるでしょう。
このロイヤルリリーのカップで、あなたの物語を紡いでみませんか?

文:ゆか

 

art:Fantasista Mayumi  作
👉 https://www.instagram.com/mayumi.kotsubo