『希望をつなぐ青い蝶』
art:Fantasista Mayumi 作
昔々、深い森の奥に住む一人の魔女がいました。彼女の名前はリリス。リリスはハーブや薬草を使った癒やしの魔法で知られており、困った人々を助けるために多くの薬やお茶を調合していました。彼女が特に愛用していたのが、色とりどりのハーブがちりばめられたティーカップ。そのカップに描かれた青い蝶と不思議な冒険をすることになろうとは、この時はまだ知る由もありませんでした。
ある夜、リリスが森の薬草小屋で調合をしていると、青い蝶がふわりと窓辺に現れました。蝶は静かに羽ばたきながら、リリスに語りかけました。「リリス、森が危機に瀕しています。森を守るにはあなたの助けが必要です。そのカップをもって私についてきてください。」
リリスは驚きながらも、カップを手に蝶を追いかけて森の奥深くへと進んでいきました。途中、花が枯れ、木々が弱っている光景が広がっていました。そして彼女は、巨大な樫の木の前にたどり着きました。その木の根元には、荘厳な王の姿をした森の精霊が立っていました。彼こそが「森の王」でした。
「リリス、我が森を救う力を試す時が来た。そのカップを使い、ハーブと魔法を駆使して試練を乗り越えなさい。」森の王は静かにそう告げました。
最初の試練は、「荒れた地に命を取り戻す」ことでした。リリスは枯れた大地にカップを置き、特別なハーブを一つずつ入れていきました。ローズマリー、カモミール、タイム—すべてがカップの中で輝き、やがて青い蝶がそのカップの上で舞い踊りました。その瞬間、枯れた大地から緑がよみがえり、花が咲き誇りました。
次の試練は、「迷える動物たちを癒やす」ことでした。森の動物たちは病に侵され、力なく横たわっていました。リリスはカップで調合したハーブティーを動物たちに飲ませました。すると、青い蝶が彼らの周りを舞い、動物たちは元気を取り戻して走り回れるようになりました。
最後の試練は、「森全体を包み込み調和する」ことでした。リリスは近くにあった泉の水をカップで汲み、青い蝶とともに特別な呪文を唱えました。その瞬間、森全体に輝く光が広がり、木々も花々も、そして動物たちも新たな活力を得ました。
森の王は深く頷き、リリスに語りかけました。「あなたの勇気と純粋な心が森を救った。力を貸してくれてありがとう。そのカップはリリスが大切に持っていてください。そして、森と人々の調和のためにこれからも力を使い続けてほしい。」
リリスは森と村をつなぐ架け橋として、このカップを使い続けました。青い蝶は時折彼女のそばに現れ、困っている人々や森を守るための道を示しました。
それ以来、このハーブのカップは「森の試練を乗り越えた魔法の器」として語り継がれるようになり、リリスの勇気と知恵もまた伝説となったのです。
あなたがこのカップでお茶を飲むとき、もしかしたら青い蝶がそばに現れて、あなた自身の試練を乗り越える力を与えてくれるかもしれません。
文:ゆか
▶ 朗読音声はこちら >>:夏のソラさん
art:Fantasista Mayumi 作
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