『自分だけの物語を紡ぐ』


art:Fantasista Mayumi  作

 イギリスの貴族文化が栄えていた19世紀、ある小さな工房で作られた美しいティーカップがありました。それは、クリームイエローにグレーのスクロール模様の優雅なデザインで、彩り豊かで細やかな花籠が飾られていました。このカップは『公爵夫人』と呼ばれ、貴族たちの間で特別な品として愛されていました。

 そんな優雅なカップにはある秘密が隠されていたのです。それは、カップでお茶を飲むと、モヤモヤする心に安らぎを与え、自分自身の望みに気づかせる力があるというものでした。製作者である陶芸家エドワードは、ある公爵夫人から依頼を受け、このカップを作りました。

 公爵夫人は多忙な日々の中で、夫からも欲しかったかたちで愛を与えられず、自分が本当に何を望んでいるのかを見失いがちでした。エドワードは、そんな彼女が少しでも心穏やかに過ごせるようにと、このカップを制作しました。そして、「このカップでお茶を飲むとき、自分の心に静かに耳を傾けましょう」という言葉を添えました。

 カップが公爵夫人のもとに届けられたある午後、彼女は初めてそのカップで紅茶を飲みました。すると、静かな安らぎが訪れ、幼い頃に夢見た庭園での平和な時間が頭に浮かんだのです。
 そのとき、公爵夫人は私が望んでいたのは心が平穏でいられる安らぎのひとときだったのだと気づきました。

 その後、このカップは公爵夫人から娘、そして孫へと代々受け継がれていきました。どの時代においても、このカップを使う人々は、忙しい日常の中で一瞬の安らぎと自分の心に向き合う時間を得ることができました。

 今では、公爵夫人のカップは特別なアンティークとして大切にされています。このカップは、ただ美しいだけでなく、使う人の心に静かな癒しをもたらします。あなたもこのカップで紅茶を楽しみながら、自分の心に耳を傾けてみてはいかがでしょうか。

 公爵夫人のカップが、あなたの日常に優雅なひとときと小さな幸せを届けてくれるはずです。

文:ゆか

 

art:Fantasista Mayumi  作
👉 https://www.instagram.com/mayumi.kotsubo