食器とわたし

思い返してみれば、幼少期から母のコレクションの食器棚をじっと眺めることが好きでした。

  わたしの心がやすらぐ場所。

社会人になってからは、おしゃれなカフェを見つけては、一人の時間、友人と語らう時間を楽しむように。自宅とは違う雰囲気、食器、自分では真似できない美味しい料理やデザートを楽しむことで、非日常を味わって日常をリセットしていました。

 子どもが生まれてからは仕事と子育てに追われる日々。

自分の時間、ゆっくり過ごす時間は全くなく、毎日が精一杯でいつの間にか他人の人生を歩いていたわたし。自分の心が置いてきぼりになっていることにも全く気づかずにいました。

一つの食器との出会いによって、新たな人生の歯車が回り始めます

 

食器の世界に魅了されたきっかけ

ある美術展で、たまたま出会ったアンティーク食器に一瞬で魅了されてしまいました。

 美しいフォルム、重厚感、ペインターさんの筆遣い……。
吸い込まれてしまいそうなくらい不思議な力があったのです。
それが英国の陶磁器ロイヤルウースターとわたしとの出会いでした。

美しい世界をもっと知りたい、そんな探究心から食器の世界へと踏み込んでいきました。

 知れば知るほど奥が深く、美しいだけではない食器の世界。
 忙しくて、帰って寝落ちするだけの毎日から、明かりが灯る感覚を覚えました。

  お気に入りの食器でのティータイム。たまにはおしゃれなカフェに行くのも良いけれど、気軽に自宅で楽しみたい。

  忙しくても心をリセットしてくれる時間。

そんな時間が日々の暮らしにかけがえのないものとなっていきました。

 

ロイヤルウースター専門店ibisのはじまり

 義両親が高齢になり、元気なうちに「そろそろ帰ろうか」と夫に提案。
夫の郷里に移住することになり、16年間務めた職場を退職しました。

移住後は、家族との時間を大切にしたい。時間と場所にとらわれない働き方をしたい。という思いから、起業することを決意。

日々に生活に追われて自分の気持ちに向き合うことすら忘れていました。

 いつか感じたわくわくした気持ち。

「自分のお店を持ってみたい」そんな憧れをふと思い出す。

 今までの仕事も大好きだけど、

家族とたわいもない会話をする時間
寝落ちするだけではない自分を大切にする時間
そんな豊かな生活も大切にしていきたい。

 

 まだ見ぬ新しい世界への一歩踏み出す背中をそっと押してくれたのもの、食器と過ごす時間でした。

 わたしと同じように、仕事、家事に子育てと忙しくて自分の時間が持てないと感じている方に食器の力を感じてもらいたい。

 食器と共に、心やすらぐ時間、自分をご機嫌にする時間をたくさんの人に
届けていきたいと思ったのがきっかけで今があります。

 

たくさんの優しさに助けられて

はじめの一歩って本当に勇気がいること。誰かが背中を押してくれないと進めないことだってある。

 はじめは、こんな小さなお店見つけてもらえるのだろうか、買ってくれる人はいるのだろうか、不安に押しつぶされそうでした。

 素敵なお客様やSNSのフォロワー様に恵まれ、支えられて、食器の力に引っ張ってもらいながら、時にはそっと背中を押してもらいながらここまで進んでくることができました。

☆店主一人の小さなお店ですが、選んでくれるお客様がいてくださる              

☆お届けした方のお喜びの声を通して、わたしが目指している素敵な時間がお届けできている

と感じられるようになり、お客様とのつながり一つ一つが私の力になっていきました。

 

大切にする気持ち

手軽に欲しいものが手に入る時代。時代とともに失われていくものもたくさんあります。

 アンティーク・ビンテージ食器も受け継がれていくなかで欠けてしまったり、割れてしまったり、いらなくなって捨てられてしまったり……様々な運命があります。

 海外からの輸送中に割れてしまう食器もあります。せっかく縁があってibisにやってきてくれた素敵な子。開けて破損していると本当に悲しい気持ちになります。 

 だからこそ、当ショップから送り出す子は大切に大切にお届けしたい

 大事にされてきた食器が、人から人へとつながっていくお手伝いができていること、本当に嬉しく思います。

 

忙しい日々に心が安らぐ時間をお届けしたい

 母の食器ボードを眺めていた時のように。

 忙しい日常から心安らぐ時間に変わったように。

 そっと背中を押してくれたときのように

 お届けした食器でお客様が素敵な時間を過ごしてくださったように。

 

「安らぎ」「非日常」「前に進む力」「笑顔」「癒しの時間」
日々の生活で大切にしたいものを食器と共にお届けしたい。

いつか、お客様やSNSのフォロワーさまと一緒にオンラインティータイムを楽しみたいという夢を持ちながら。

 手にしたお客様の素敵な時間や笑顔を想像しながら商品を選び、お包みして大切にお届けすること

それが私が大切にしていることです。