『しあわせ運ぶ果実の宝石』
イギリス中部、絵画のように美しいイブシャム渓谷。その肥沃な土地は、代々農家の人たちに豊かな果物や野菜をもたらしてきました。この地には、一つの特別な言い伝えがありました。それは、「イブシャム」と呼ばれるカップにまつわる物語です。
art:Fantasista Mayumi 作
19世紀のある日、イブシャム地方の名家、エヴァンス家の末娘、ローズは、父の農園で収穫した果物を市場へ運ぶ手伝いをしていました。ある日、ローズは市場の帰り道に一つの陶器店に立ち寄ります。そこで彼女の目に留まったのが、美しい金の縁取りが施され、熟した果物が美味しそうに描かれた「イブシャム」というティーカップでした。
「このカップは特別なものなの」と店の主人が言いました。「イブシャムの豊穣を祝うために作られたものだと言われていて、このカップでお茶を飲むと、持ち主に幸運と実りをもたらすと言われているのよ」
ローズはそのカップを手に取り、まるで自分の農園のキラキラ輝く果物が描かれているような親近感を覚えました。父の農園がもっと豊かになり、村全体が幸せで溢れるような未来を願いながら、彼女はそのカップを購入しました。
その夜、ローズは家族とともにティータイムを楽しむために、「イブシャム」のカップに紅茶を注ぎました。カップから立ち上る香りは、どこか不思議で、まるで果樹園にいるかのような華やかでわくわくする気分にさせました。
次の朝、農園に出たローズと家族は驚きました。前日までまだ青かった果物が、朝日を浴びて見事に熟していたのです。イチゴの赤、プラムの紫、りんごの黄金色…それはまさにキラキラと輝く自然の宝石のようでした。村人たちも噂を聞きつけ、エヴァンス家の農園に集まりました。
「こんなに美しい実りを見たのは初めてだ」と村人たちは口々に言いました。
それからというもの、ローズは「イブシャムゴールド」のカップでお茶を飲むたびに、農園の果物や野菜がさらに豊かに実り、村全体に笑顔が広がりました。ローズはこの奇跡を自分の家族や村人だけのものにするのではなく、農園の果物を周囲の村にも分け与えることを決めました。
その結果、村々が力を合わせて収穫祭を開くようになりました。その祭りでは、「イブシャム」のカップを囲み、村人たちが感謝の気持ちを込めてお茶を楽しむのが恒例となりました。
ローズの優しさとカップの不思議な力のおかげで、イブシャム渓谷はさらに栄える土地となりました。「イブシャムゴールド」のカップは、豊穣と幸せをもたらす象徴として村の宝物となり、世代を超えて語り継がれることになりました。
そして今では、世界中でこのカップが愛され続けています。「イブシャム」のカップでお茶を飲みながら、大地と自然の恵みに感謝する。そんなひとときが、豊かさを感じられる幸せな世界へと誘ってくれます。
文:ゆか
▶ 朗読音声はこちら >>:声と言魂セラピスト怜胡さん
art:Fantasista Mayumi 作
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